概要

群発頭痛は片側の眼を中心とした非常に強い痛みとともに、涙が出たり、目が充血したり、鼻が詰まったり、鼻水が出たりする頭痛で、15分から180分程度で治り、同様の発作が連日出現します。非常に強い痛みにより日常生活に大きな影響を与えるため、適切な痛みの管理が必要になります。

群発頭痛は、国際頭痛分類第3版では三叉神経・自律神経性頭痛(TACs)に分類され、同じような症状が生じる頭痛のタイプがいくつかあります。病気によって使用する薬が変わりますので注意が必要です。

群発頭痛は10万人あたり56~401人程度が有病しているといわれていて、片頭痛に比べてその数は少ないです。20歳から40歳代で多くの方が発症し、また男性は女性より3~7倍程度多いといわれています。群発期には発作は定期的に起こるほか、アルコール、ヒスタミンまたはニトログリセリンによって誘発されます。

当院での取り組み

当院では群発頭痛の方には、ベラパミルとステロイドの内服投与やスマトリプタン皮下注射などを適宜組み合わせて行っています。また片頭痛を合併している方にはスマトリプタン点鼻液の頓用処方も行っています。

分類

群発頭痛は発作期間の長さによって、反復性群発頭痛と慢性群発頭痛に分類されます。

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)における群発頭痛の分類

3.1 前兆のない片頭痛
 3.1.1 反復性群発頭痛
 3.1.2 慢性群発頭痛

診断基準

群発頭痛

A.B~Dを満たす発作が5回以上ある
B.(未治療の場合に)重度~きわめて重度の一側の痛みが眼窩部、眼窩上部または側頭部のいずれか1つ以上の部位に15~180分間持続する
C.以下の1項目以上を認める
 ①頭痛と同側に少なくとも以下の症状あるいは徴候の1項目を伴う
  a)結膜充血または流涙(あるいはその両方)
  b)鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
  c)眼瞼浮腫
  d)前額部および顔面の発汗
  e)縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
 ②落ち着きのない、あるいは興奮した様子
D.発作の頻度は1回/2日~8回/日である
E.ほかに最適なICHD-3の診断が無い

反復性群発頭痛

A.群発頭痛の診断基準を満たす発作があり、発作期(群発期)が認められる
B.(未治療の場合に)7日~1年間続く群発期が、3ヶ月以上の寛解期をはさんで2回以上ある

慢性群発頭痛

A.群発痛の診断基準を満たす発作があり、Bを満たす
B.1年間以上発作が起こっており、寛解期がないか、または寛解期があっても3ヶ月未満である

治療

群発頭痛の治療には、急性期(発作期)の治療と予防療法とがあります。急性期治療は頭痛を抑える治療で、薬物治療の他に酸素によって発作を抑える治療もあります。予防療法は主に薬物治療を行います。

急性期(発作期)治療

①トリプタン製剤

トリプタン製剤は片頭痛に最もよく用いられる薬ですが、群発頭痛にもよく使用されます。最も効果の強い薬はスマトリプタン3㎎皮下注射で、投与後15分で劇的に頭痛が改善します。ほかにもスマトリプタン点鼻液20㎎や、ゾルミトリプタン5㎎から10㎎の内服による有効性が示されています。

②純酸素吸入

高濃度の酸素をフェイスマスクを用いて15分間吸入することで、80%の方に効果が認められています。酸素ボンベを自宅で管理することは容易ではなく、最近では空気中の酸素を濃縮して使用する在宅酸素療法によって自宅でも高濃度の酸素を吸入することが出来ます。現在当院では在宅酸素療法は行っておりません。

③その他

海外ではソマトスタチンアナログ、オクトレオチドの有効性が報告されていますが日本では保険診療として使用することはできません。また通常の鎮痛薬(非ステロイド系鎮痛薬)はほとんど効果は期待できません。

予防治療

①カルシウム拮抗薬 

ベラパミルの予防効果が示されています。もともと頻脈に使用する薬剤ですので、薬の副作用として徐脈が生じる可能性があります。

②ステロイド

ステロイド単剤での短期間服用は群発頭痛発作の早期終了に有効とされていますが、科学的根拠は明確にはなっていません。一方で①のベラパミルと併用することで短期的な予防効果が示されています。また、後頭部へのステロイド皮下注射により予防効果が認められています。

③CGRP関連製剤

アメリカでは抗CGRP製剤であるガルカネズマブ(エムガルティ)皮下注射が予防療法として使用されていますが、日本では群発頭痛に対して保険適応がありません。

④その他

ガバペンチン、トピラマート、バクロフェンなどの有効性が報告されていますが、科学的に立証はされていません。