言葉に障害が出た場合は脳の病気を考えます。よく混同されますが、言葉の障害には大きく2種類あります。一つはろれつが回らない、うまくしゃべれない。もう一つは言葉が出ない、何を言っているのかわからないというものです。

舌や喉の筋肉がうまく動かせなくなると、ろれつが回らない、うまく話ができないような状態となり、これを「構音障害」、あるいは「構語障害」と言います。一方で言葉を理解できない、言語を口から出すことができない、物の名前を言葉として出すことが出来ない場合は、言語を担当する脳の部分である言語中枢の障害が原因であることが多く、これを「失語」と言います。

構語障害 基本的には舌やのどの筋肉の障害によるもので、言葉自体はしっかりと認識してしゃべりだすことが出来ますがろれつがまわりません。

失語 言葉が出ない、ものの名前がわからない、音は聞こえるが何を言っているのか分からない(外国語で話しかけられているような感じ)、文字が書けない、文字が読めないといった症状です。

構語障害と失語はどちらも言葉に関する症状なのでよく間違われますが、全く別の症状で、想定する病気も異なります

ー 構語障害(ろれつが回らない)

ー 失語

構語障害、構音障害

急にろれつが回らなくなったうまくしゃべることが出来なくなった場合は、脳の病気を発症した可能性があります。うまくしゃべることが出来なくなる状態、ろれつが回らない状態を構語障害構音障害と言います。舌やのどの筋肉が動かない、あるいは協調して動かすことが出来なくなるとろれつが回らなくなります。

手足の麻痺と同様に、運動神経が損傷すると片側(右側や左側)の舌やのどの筋肉が麻痺してしまい、構語障害が出現します。また言葉をしゃべるときには多くの種類の細かな筋肉を絶妙なバランスでうまく協調するように使いこなさなければなりません。この協調運動が出来なくなると構語障害が出現します。麻痺によって起きる構語障害と協調運動障害によって起きる構語障害はやや特徴が異なりますが、最終的には画像検査を行い、構語障害の原因となっている病気を確かめる必要があります。

急にろれつが回らなくなった場合は、脳梗塞、脳腫瘍、脳出血などによる障害を想定する必要があり、またこれらの病気は早期に治療が必要になることが多いので、早めに医療機関を受診しましょう。

他にも過剰量の飲酒、意識障害、睡眠剤や安定剤全身状態の悪化などの影響でろれつが回らなくなります。

急にろれつが回らなくなった時の注意

構語障害が出現すると、嚥下障害(のどの筋肉が麻痺してしまい、物をうまく飲み込めなくなってしまう)となることが良くあります。嚥下障害を発症すると、食べ物や飲み物が誤って肺に入ってしまうことがありこれを誤嚥と言います。誤嚥すると咳が止まらなくなったり、また誤嚥性肺炎を引き起こしたり、あまりにも大きな物を誤嚥してしまうと窒息してしまうこともあります。誤嚥は非常に危険な状態ですので、急にろれつが回らなくなった場合は嚥下障害となっている可能性があり、物を食べたり水を飲んだりする場合は少量から慎重にする必要があります。

嚥下障害、誤嚥は危険な状態ですので早めに医療機関を受診しましょう。またまったく飲み込めなくなってしまった場合は、水分管理や栄養管理を当面医学的に行う必要がありますので、医療機関を受診しましょう。

失語

脳の前頭葉の後方側頭葉の上方に言語中枢があります。またこれらの言語中枢を中継する神経線維があり、これらが障害されると失語になります。言語中枢は右利きの人はほぼ左側に存在します。左利きの人左側に存在することもあれば右側に存在することもあります。

失語はまず大まかに、運動性失語感覚性失語に分かれます。運動性失語は言語は理解できるが話すことが出来ないというものです。感覚性失語は話すことはできるが相手の言っていることを理解できないというものです。また運動性失語と感覚性失語の両方がある場合は混合性失語と言います。それ以外にも細かな失語の分類があります。

前頭葉の言語中枢はブローカ野(Broca野)と呼ばれ、ここが障害されると運動性失語が生じます。典型的な運動性失語は、相手の話していることが理解でき、また文章も読んで理解することが出来ますが、自分では話すことも字を書くこともできません。

側頭葉の言語中枢はウェルニッケ野(Wernicke野)と呼ばれ、ここが障害されると感覚性失語が生じます。典型的な感覚性失語は、自分が考えたことは話すことも書くことも出来ますが、相手の話していることを言語として認識できません。また文章も読むことはできません。音は聞こえますが、言葉の意味を理解することが出来なくなります。イメージとしては外国語で何かを言われているような感じです。また文章も、文字があることはわかりますが、何を書いているのか意味が分からなくなります

純粋な運動性失語や純粋な感覚性失語の場合もありますが、実際にはある程度両方混ざった言語障害が起きることが多いです。また運動性失語がある方に感覚性失語があるかどうかを評価するのは難しく、逆に感覚性失語がある方に運動性失語があるかどうかを評価するのも難しいです。

失語は社会生活を行う上でとても大変な症状で、特に強い感覚性失語の場合は生活が非常に困難になります