高血圧と聞くとどんなイメージを持ちますか?

「健康診断で血圧の異常を指摘された。」「テレビやネットでよく聞く」「血液の流れのこと?」

など、さまざまな印象がると思います。それではそもそも血圧とは何でしょうか?血圧が高い状態を放置しておくとどんな悪いことが起こるのでしょうか?

高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子より抜粋

心臓が収縮すると血液が血管を通って全身に送られます。もともと血管はある程度柔らかいので、心臓によって血液が押し出されてくることによって、大動脈が膨らみます。心臓が拡張する際には心臓から血液は送られてきませんが、大動脈への圧が弱まることによって大動脈も収縮し、ゆっくり血液が全身に送られます。

心臓が収縮することによって血管に加わる圧力が最も高くなった時の圧力が収縮期血圧(上の血圧)で、心臓が拡張して血管に加わる圧力が最も小さくなった時の圧力が拡張期血圧(下の血圧)です。

140mmHg/90mmHg以上が高血圧

高血圧はその名の通り血圧が高い状態を指す病気です。上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上の場合、高血圧と診断します。高血圧の人数は薬4300万人と言われ、30歳以上の方であれば2人に1人は高血圧になっていると言われています。

血圧とは動脈の中を流れる血液の圧力のこと。簡単に言えばどれだけの強さで血液が動脈を流れているかの指標です。血流の強さと聞くと、高い方が良いと思われるかもしれません。血圧が必要以上に低い場合は危険ですが、高すぎる場合も要注意です。

高血圧を放置するとどうなるの?

生命を維持するためには最低限の血圧が必要ですが、必要以上に高い血圧を維持していると様々な問題が出てきます。血圧が高いということは、血管の壁に加わる力が強いことを意味します。血管壁に強い力が加わり続けることで血管壁にダメージが加わり、蓄積し、血管年齢が早く進みます。この血管年齢が早く進むことにより様々な悪いことがおきるのです

高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子より抜粋

血管年齢が進むと、血管が詰まってしまい、それより先に血液を送れなくなることがあります。また血管が切れてしまい、出血することもあります。血管の障害が出現することで大きな問題なる臓器として、脳、心臓、腎臓が挙げられます。脳の場合は脳梗塞脳出血、心臓の場合は狭心症心筋梗塞が、腎臓の場合は腎機能障害が出現します。特に脳や心臓の障害の場合は突然命に関わることもあり、また後遺症のために生活水準が著しく低下することもあるため注意が必要です。

このように生活水準を著しく低下させる可能性のある高血圧ですが、基本的に自覚症状はありません。脳卒中や心筋梗塞を起こす直前まで前兆はなく、気づいたらこれらの重病を発症することになります。そのため、自覚症状が無くても定期的に血圧を測定し、また血圧を上げてしまうような生活習慣には気を付ける必要があります。

どうして高血圧になるの?

高血圧には、血圧を上げてしまう別の病気がある「二次性高血圧」と、血圧上昇の原因をはっきりと一つに断定できない「本態性高血圧」があり、日本人の高血圧のうち8割から9割は本態性高血圧になります。

本態性高血圧の原因としては食生活を含む生活習慣と遺伝的要因などが言われています。塩分の過剰摂取、喫煙、肥満、運動不足、加齢、糖尿病、脂質異常症などにより動脈硬化が進むことで高血圧となると言われています。

二次性高血圧の原因の疾患としては、腎臓病や内分泌(ホルモン)の異常、血管の病気、脳の病気、薬の副作用などが挙げられます。これらの原因より血圧が押し上げられ、高血圧となります。二次性高血圧の場合は原因を除去することで高血圧が治る場合もあります。

それでは高血圧、あるいは高血圧の可能性があると言われたらどうすればよいでしょうか?血圧が高いだけではほとんど症状はありません。脳梗塞や心筋梗塞を発症する可能性が高くなるものの、これらは発症する直前まで症状はありません。様子を見ていても大丈夫でしょうか?それともすぐにお薬で血圧を下げる必要があるでしょうか?

血圧が上がれば上がるほど脳卒中や心血管病を起こしやすくなる

血圧レベル別の脳心血管病死亡ハザード比と集団寄与危険割合(PAF)

高血圧治療ガイドライン2019より抜粋

この図は、血圧が高くなればなるほど、脳卒中や心血管病(狭心症や心筋梗塞)を発症しやすくなることを表しています。例えば40歳から64歳の方では、上の血圧が120の時と比べ、上の血圧が140から159では3倍程度、160から179では6倍程度まで危険度が上がることが分かります。また、血圧を適切に管理することでこれらの発症率を下げることもわかっています。

脳卒中や心血管病は生活水準を著しく低下させます。そして発症直前まで前兆が無いことがほとんどです。これらの重篤な病気を発症しないためにも、血圧管理は非常に重要です。

家庭血圧(自宅での血圧)測定のすすめ

血圧を測定する機会はいろいろとありますが、特に病気が無い方の場合、健康に気を使いスポーツジムなどで積極的に血圧測定をしている場合を除き、会社の検診や自治体の特定検診など、1年に1回程度測定するだけではないでしょうか?高血圧は無症状。いつのまにか高血圧になり、いつの間にか脳や心臓病、腎臓病のリスクを抱えることになります。

家庭血圧を測定することで、正確に血圧の状況を観察することが出来ます。脳卒中や心血管病の発症を予測する方法として、診察室血圧(病院で測る血圧)よりも家庭血圧がより優れていることも分かっています。

血圧計は家電量販店で購入できる物でも精度にはほとんど問題ありませんが、手首で測るものでは誤差が大きく出てしまうため、上腕(二の腕)で測るものにしましょう。

家庭血圧を測るときのルール
  • 朝と夜の1日2回、椅子に座って測定する
    朝は①起床後1時間以内、②排尿後、③食前・服薬前、④1-2分の安静後
    夜は①就寝前、②1-2分の安静後
  • 静かで過ごしやすい温度の部屋で測定する
  • 椅子に足を組まずに腰かけ、血圧計の高さと心臓の高さを合わせる
  • 測定前にタバコを吸わない、飲酒しない、カフェインを摂らない
  • 測定中は話をしない、力を入れたり動いたりしない
  • 原則として2回測って、すべてを記録する

もし健康診断で高血圧を指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう

高血圧はいつのまにか、無症状で、少しずつ体を蝕んでいく病気です。現在無症状でも、自分自身の健康を過信せず、早めに医療機関を受診しましょう。経験豊富な医師により血圧管理について判断することはとても重要です。また血圧のお薬は病院でしか手に入れられません。高血圧を指摘されたら早めに必ず医療機関を受診するようにしましょう。

自分でできることをコツコツを行いましょう

血圧管理は行うことが沢山あります。医療機関への通院や高血圧のお薬などもその一つですが、それだけでは足りません。自分自身で、自宅で行えることが沢山あります。

①血圧測定

1か月に1回の病院での血圧を測定してもあまりあてになりません。自宅で概ねどのくらいの血圧であるかがとても重要です。脳卒中や心血管病の発症を予測する方法として、診察室血圧(病院で測る血圧)よりも家庭血圧がより優れていることも分かっています。高血圧と言われたら、朝と夜にそれぞれ2回ずつ自宅で血圧を測定し、それを血圧手帳(なければ普通の手帳やカレンダー)に記入しておきましょう。後から血圧の推移を正確に把握することが出来ます。これがとても大事です。

家庭血圧を測るときのルール

②減塩

食塩を多く摂取することで血圧が上がります。逆に塩分を制限することで血圧が下がります。また塩分制限をすることで動脈硬化の進みが遅くなります。塩分制限は高血圧以外の方にも有効ですが、特に高血圧の方は必ず塩分を控えなければなりません(他の病気により塩分摂取が必要な場合もあります。また夏の暑い日には熱中症予防として塩分摂取が必要な場合があります)。1日の塩分摂取量は6g未満にすることを推奨されています。一般的な日本人の1日当たりの塩分摂取量は男性が10.8g、女性が9.1gと報告されており、約3分の2から半分程度まで塩分を減らす必要があります。

塩分制限の考え方

すべての食材の塩の量を測定することなんて、日常生活では出来ません。では適切な塩分の管理はどのようにしたら良いでしょうか。

病院食を食べて舌で覚える

病院に入院したことのある方は、病院食を食べると分かると思います。病院食は基本的に栄養士が管理をしており、塩分も適切に管理されています。病院食の味がとても薄いと感じる方が多いと思いますが、そのくらいの味の濃さ(しょっぱさ)が適切な塩分量と言えるでしょう。

調味料を工夫する

日本で使われる塩の含まれる調味料として主なものは、塩、しょう油、味噌、コンソメ、スープの素などが挙げられます。単純にこれらの使用する用を3分の2から半分程度にすると良いでしょう。その分味が薄くなりますので、塩分の入っていない他の調味料で工夫をします。例えば、コショウ、七味、生姜、柑橘類などの物が良い例です。減塩の調味料を使うことで塩分を減らす工夫にもなります。

外食や加工品を控える

外食や加工品は、味の濃い食品が多く、またどれほどの塩分が入っているか分からないため、出来るだけ控えましょう。

汁は残す

ラーメンや蕎麦、うどんなど、麺類の汁はなるべく残すようにしましょう。

③運動

適切な運動により血圧低下、動脈硬化進行の抑制効果が期待できます。

適切な運動とは、

  • ややきつい運動を
  • 1日30分から1時間程度
  • できれば毎日、少なくとも週に3日以上
  • 目標週に180分

を目標に行います。具体的には早歩き、スロージョギング、ランニングなどが当てはまります。運動に慣れていない方は、かなり軽めの運動から始め、徐々に体を慣れしていきましょう。また膝関節や股関節、腰等に痛みがある場合は無理に行ってはいけません。適度な運動による体調管理を心がけるようにしましょう。

運動する時間が作れない場合は、なるべく歩くようにする、出来るだけ階段を使うようにする、などして歩数をかせぐことが大切です。この場合は万歩計を使って1日の総歩数を計測し、血圧手帳やカレンダーに記録しておきましょう。

④減量、体重管理

太りすぎは血圧のみならず、糖尿病や脂質異常症、肝機能障害、腎機能障害など様々な病気を引き起こします。また体重を適正化することで血圧降下が期待できます。

体重はBMI(体格指数)を25未満を目指して管理します。

※ BMI = 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

急激に体重を落とすと体調不良やリバウンドの原因となります。適切なカロリー摂取や間食をしないなどの食事制限と運動療法で長期にわたって適正体重の維持に取り組みましょう。

目標の体重の目安(BMI 25)

身長 (cm)目標体重 (kg)
14049.0
14556.6
15056.3
15560.1
16064.0
16568.1
17072.3
17576.6
18081.0

ではどのような場合にお薬が必要になるのでしょうか?

お薬はどのような種類があるのでしょうか?

血圧の治療の目標はいくつを目指すのでしょうか?

高血圧のお薬の治療については次のページで詳しく説明をしています。