概要

緊張型頭痛は「肩こりからくる頭痛」と言われるもので、最も多い一次性頭痛です。年間有病率は21.7%から22.4%程度と5人に1人以上はこの頭痛に罹患しているといわれています。一次性頭痛ですから命に関わる頭痛ではなく、また片頭痛や群発頭痛のように激しい頭痛が生じるものでもありませんが、持続時間が比較的長いことが多く、つい市販薬を多用してしまうこともあります。

治療は薬物治療が主になりますが、片頭痛や群発頭痛のように日常生活に非常に大きな影響を与えるものではなく、また頭痛の持続時間が長いため、際限なく薬を内服してしまわないようにある程度は薬剤の制限をしながら痛みの管理をすることが大切です。

分類

緊張型頭痛には痛みの頻度や持続時間によって、稀発(きはつ)反復性、頻発反復性、慢性に分類されます。稀発反復性緊張型頭痛はほとんど日常生活に影響することはありません。病院に来られる多くの方は頻発反復性緊張型頭痛か慢性緊張型頭痛になります。

国際頭痛分類第3版(ICHD-3)における緊張型頭痛の分類

2.1 稀発反復性緊張型頭痛
 2.1.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う稀発反復性緊張型頭痛
 2.1.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない稀発反復性緊張型頭痛
2.2 頻発反復性緊張型頭痛
 2.2.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う頻発反復性緊張型頭痛
 2.2.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない頻発反復性緊張型頭痛
2.3 慢性緊張型頭痛
 2.3.1 頭蓋周囲の圧痛を伴う慢性緊張型頭痛
 2.3.2 頭蓋周囲の圧痛を伴わない慢性緊張型頭痛

診断基準

稀発反復性緊張型頭痛

A.平均して1か月に1日未満(年間12日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす
B.30分~7日間持続する
C.以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
 ①両側性
 ②性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
 ③強さは軽度~中等度
 ④歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
 ①悪心や嘔吐はない
 ②光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

頻発反復性緊張型頭痛

A.3か月を超えて、平均して1か月に1~14日(年間12日以上180日未満)の頻度で発現する頭痛が10回以上あり、かつB~Dを満たす
B.30分~7日間持続する
C.以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
 ①両側性
 ②性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
 ③強さは軽度~中等度
 ④歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
 ①悪心や嘔吐はない
 ②光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

慢性緊張型頭痛

A.3か月を超えて、平均して1か月に15日以上(年間180日以上)の頻度で発現する頭痛で、B~Dを満たす
B.数時間~数日間、または絶え間なく持続する
C.以下の4つの特徴のうち少なくとも2項目を満たす
 ①両側性
 ②性状は圧迫感または締めつけ感(非拍動性)
 ③強さは軽度~中等度
 ④歩行や階段の昇降のような日常的な動作により増悪しない
D.以下の両方を満たす
 ①悪心や嘔吐はない
 ②光過敏や音過敏はあってもどちらか一方のみ
E.ほかに最適なICHD-3の診断がない

治療

日常生活に支障をきたす場合には薬物治療を検討します。薬物治療は急性期治療と予防療法に分けられます。緊張型頭痛は持続時間の長いことが多いため、だらだらと長期間にわたり鎮痛薬を使用しがちです。薬物使用過多による頭痛(薬物乱用性頭痛)にならないよう注意が必要です。

急性期治療薬

急性期治療薬はアセトアミノフェン(カロナール)、非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニンなど)が中心になります。様々な部分の痛みによく使用される痛み止めで、頭痛にも効果があります。長期間治療薬を使用することで薬物使用過多による頭痛(薬物乱用性頭痛)を発症する可能性があるため注意が必要で、具体的には1週間の中で、2~3日以上の使用は控えることが大切です。

 鎮痛効果について科学的な根拠の強い治療薬は以下の通りです。

①アセトアミノフェン (カロナール)
②ロキソプロフェン (ロキソニン)
③メフェナム酸 (ポンタール)
④アスピリン・ダイアルミネート配合 (バファリン)
⑤イブプロフェン (ブルフェン)
⑥ナプロキセン (ナイキサン)
⑦ジクロフェナク (ボルタレン)

予防薬

三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンは抑うつ状態の有無にかかわらず緊張型頭痛の予防効果があります。眠くなる副作用があるので当院では夕食後か眠前に1日1回内服としています。まずは10㎎から内服を開始し、予防効果を見ながら徐々に増量します。緑内障や前立腺肥大症のある場合は使用することが出来ないため注意が必要です。また少量(1日30㎎以下)であれば妊娠期においても比較的安全に使用することが出来ますが、妊娠した場合やその可能性がある場合は中止する方が無難です。

他の抗うつ薬や抗てんかん薬にも緊張型頭痛の予防効果が認められるお薬がいくつかありますが、アミトリプチリンが最も科学的根拠のしっかりとしたお薬になります。