頭痛は脳の病気が原因で頭痛が生じる場合(二次性頭痛)とそうでない場合(一次性頭痛)があります。二次性頭痛の中にはくも膜下出血など今現在命に関わっている病気もあり、原因となる疾患の治療を早急に進めなければなりません。頭痛の場合に最も重要なことは、「一次性頭痛」なのか「二次性頭痛」なのかを診断することです。

問診や診察である程度一次性頭痛か二次性頭痛かを予想することが出来ますが、画像検査を行うことでより確実に診断をすることが出来ます。

当院での取り組み

当院では頭痛に対しては積極的に画像検査を行っています。CT、MRIを完備しており基本的に即日検査、即日説明をしています(受診された時間やその日の混み具合によっては、翌日以降に検査を予定することもあります)。

二次性頭痛が認められた場合は原因疾患により、必要であれば総合病院へ紹介したり、当院で適切な投薬治療をするなど対処しています。また一次性頭痛の場合は頭痛のタイプを診断し、適切な鎮痛薬や予防薬を処方しています。

一次性頭痛

一次性頭痛の場合は比較的時間をかけて治療することが可能です。一次性頭痛でも痛みがあまりにも強く普通の生活ができない場合(学校に行けない、勉強ができない、遊びに行けない、仕事に集中できない、家事が困難など)は、鎮痛剤を使用して生活水準を下げないようにします。頭痛の性状によって使用する鎮痛剤が異なりますので、どのくらいの頻度で、どのような頭痛がおきたか、頭痛以外に吐き気や、目の症状が無いか、などが重要な情報です。また、鎮痛剤を使い過ぎるとむしろ痛みに過敏になり、薬物に依存してしまう状態(薬物乱用性頭痛)になる可能性があるので、適切な量を使用することが大切です。

一次性頭痛であれば、基本的には脳の重大な病気からくる症状ではないので、頻繁に脳の検査をする必要はありません。しかし、いつもと違う性状の頭痛が生じた場合は、まったく新しい病気を発症している可能性がありますので(二次性頭痛を発症した可能性がある)再度検査を行う必要があります。

片頭痛

名前からよく混乱されますが、片側におきる頭痛の全てが片頭痛というわけではありません。
片頭痛はある一連の症状の経過をたどる頭痛の発作です。典型的には

  • ギザギザとした光や虹色の模様などが見える、よく見えない黒い部分が出現する(閃輝暗点)
  • むかむかとしてくる。吐くこともある
  • 非常に強い頭痛が片側に起きる。頭痛はズッキンズッキンと拍動する。
  • 発作中は光、音、臭いに過敏になる。発作中は暗くて静かなところでじっとしていたくなる
  • 痛みが強く動けない
  • 4時間から3日間程度で勝手に治る
  • この一連の発作が月に2,3回程度出現する

このような特徴がある場合は片頭痛の可能性が高いです。これらの特徴がすべて当てはまることは少なく、閃輝暗点がない場合や、光過敏がない場合、発作の頻度がもっと多い場合や少ない場合など様々です。頭痛が非常に軽い場合は通常の鎮痛剤でもある程度抑えられることもありますが、基本的には激しい頭痛を伴うことが多く、その場合は片頭痛用の特殊な頭痛薬を使います。また発作の頻度が多い場合は発作自体を減らす予防薬を使うこともあります。

筋緊張性頭痛

肩こりからくる頭痛と呼ばれているもので、頭痛の患者さんの多くはこの頭痛と言われています。肩こりは肩の筋肉が凝っているものです。色々な肩の筋肉がありますが、そのうちのいくつかは後頭部までつながっています。肩こりがあると後頭部が張っているような感じ、後頭部が重たい感じ、こめかみが締め付けられるような感じなど様々な頭痛が起きることがあります。

筋緊張性頭痛は脳の異常信号ではありませんので、時間をかけて鎮痛剤の調整を行うことが出来ます。肩こりが改善すればよくなることもありますが、実際に肩こりを治すことは難しく、鎮痛剤を適宜使いながら頭痛とうまく付き合っていくことになります。薬物使用過多による頭痛(薬物乱用性頭痛)とならないよう注意しながら長い目で頭痛とうまく付き合っていきましょう。

群発頭痛

非常に強い頭痛が片側の目の周りからこめかみ辺りに出現し、15分から3時間程度で無くなります。同時に目が充血したり、涙が出たり、鼻がつまったり、鼻水が出たりします。あまりにも強い痛みのため、のたうち回る方もいます。発作は2日に1回から1日に何回も起きることもあります。天候に左右されることもあり、繰り返す(反復性)場合は、毎年決まった時期に2週間から3か月間程度頭痛発作を繰り返します。

通常の鎮痛剤はほとんど効果がなく、頭痛発作時には特殊な頭痛薬の注射薬や内服薬、酸素吸入を行うことで頭痛は改善しますが、発作期間中は何度も頭痛発作がおきますので、ステロイドや不整脈の薬などで発作自体を予防をします。

二次性頭痛

くも膜下出血、脳内出血や硬膜下血腫などの出血、脳腫瘍、下垂体卒中、髄膜炎、脳炎、脳膿瘍、てんかんなどの脳の疾患が原因で頭痛がおきることがあり、これを二次性頭痛といいます。原因疾患によっては早期に治療が必要な場合があり、当院でこれらが疑われた場合はこれらの病気を治療できる病院を紹介します。

また、緑内障や副鼻腔炎など眼科や耳鼻咽喉科での診療が必要な病気からも頭痛が起きることがあり注意が必要です。

くも膜下出血 - 最も危険な頭痛

数ある二次性頭痛の中でも最も危険な疾患はくも膜下出血です。典型的には突然の激しい頭痛(頭痛が出現してからピークになるまでに数秒しかかからない)で、「ハンマーで殴られたような頭痛」、「雷鳴頭痛」などとも言われます。くも膜下出血を発症すると、たとえ今現在元気だとしても突然命を失う可能性があるため、早急に手術が行える病院に搬送し、適切な検査、治療を受ける必要があります。非常に危険な病気なので、このような頭痛が出現した場合は早急に医療機関を受診しましょう。判断が非常に難しいのですが、「ハンマーで殴られたような頭痛」や「雷鳴頭痛」ではなくてもくも膜下出血を発症していることがありますので、このような激しい頭痛ではないからといってくも膜下出血ではないとは言い切れません。いつもと性質の異なる頭痛が出現したら脳の検査を行いましょう

頭痛の診療でもっとも重要なことは、まずくも膜下出血でないことを確認することです。当院でくも膜下出血が確認された場合は早急に搬送先の病院を探してご紹介します。また医師から直接先方の医師に情報を伝えます。

三叉神経痛

片側の顔面にビリッと電気が一瞬走るような痛みを感じます(電撃痛といいます)。目の下あたりから耳の方に向かって、あるいは下の顎から耳の方に向かっておきることが多いですが、まれに額におきることもあります。痛み自体は一瞬で生じて一瞬で無くなります。安静にしていれば痛むことはなく、会話、歯磨き、洗顔、ものを食べる、といったことが誘因となり痛みます。顔面の感覚をつかさどる三叉神経に血管が接触することで症状が出現します。まれに脳腫瘍などほかの病気で症状がでることがありますので脳の検査が必要になります。カルバマゼピン(テグレトール、てんかんの薬)がよく効きますのでまずは内服で様子を見ますが、効果が乏しい場合や薬の副作用などで内服できない場合には放射線治療(ガンマナイフ)や手術を検討します。

緑内障

緑内障の発作で目が急激に痛くなり、頭痛も同時に感じることがあります。脳の検査も重要ですが、緑内障の急激な発作の場合は視力や視野に障害が残る可能性があるため早急に治療を行う必要があります。目の痛みがある場合は早めに眼科を受診しましょう。もちろん頭痛もある場合は二次性頭痛の可能性がありますので脳の検査についても考える必要があります。

副鼻腔炎

副鼻腔炎がひどくなると炎症が広がり、頭痛を引き起こすことがあります。あまりにも副鼻腔炎がひどくなりすぎると、感染が脳にまで影響する可能性もありますので、場合によってはきちんと副鼻腔炎を治療する必要があります。特に眉間を中心とした頭痛、またその部分が赤く腫れている場合は副鼻腔炎による頭痛の可能性がありますので医療機関を受診しましょう。この場合は脳神経外科だけではなく耳鼻咽喉科の受診も必要です。

帯状疱疹

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスが皮膚の神経に痛みを起こす病気です。体中のどこの皮膚の神経にも発症する可能性があります。左右どちらかの神経に沿って、痛みや嫌なぴりぴりする感じとともに赤いブツブツとした水ぶくれが出ます。頭の皮膚にも発症することがあり、これを頭痛として自覚します。頭皮の中の発疹を自分で見つけることはなかなか難しく、脳の病気が心配で来院される患者さんの中に、たまに頭皮の帯状疱疹が見つかることがあります。帯状疱疹は放置しておくと、強い痛みがずっと残る「帯状疱疹後神経痛」になってしまうことがあります。早期に診断し、早期に抗ウイルス薬を始めることが大切です。