脳の障害

脊髄の障害

末梢神経の障害

感覚の神経が障害されると、触っても温度が分からない痛みを感じないなど様々な感覚の障害が出現しますが、ビリビリする痺れ痛みを伴う痺れとして感じることも非常に多いです。

感覚の神経は手や足や顔など様々な場所から始まり、体の感覚神経は脊髄を通って、顔の感覚神経は頭蓋骨の穴から直接脳に入ります。その後脳の中の視床という部分を通過して、大脳の頭頂葉の一次感覚野まで到達してここで感覚として認識されます。この途中のどこかが障害されることでしびれをはじめとする感覚障害が出現します。

痺れが出現した場合は、症状を詳しく聞くことによって、感覚神経のどの部分の障害かを想定し、脳、頸椎や腰椎の検査などを行い、原因となる病気を探し、必要に応じて原因となる病気の治療を行います。脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など迅速な治療を必要とする病気が原因であることもありますので、いつもと違う痺れが出現した場合は医療機関を受診しましょう。

脳の障害

脳に入った感覚神経は、脳幹視床などを通って一次感覚野(頭頂葉)に到達します。脳梗塞脳出血脳腫瘍などの病気で感覚神経が破壊されるとその神経が支配している部分の感覚が障害されます。

脳幹には感覚神経だけではなく、他にも様々な神経がありますので、手足の麻痺、ろれつが回らない、顔が半分動かない、耳が聞こえない、バランスが取れない、など様々な症状が一緒に出ることがあります。

視床の障害では強いしびれなどの感覚障害が比較的広範囲にでますが、脳は体の片側(反対側)を支配していますので、視床の障害で左右両方に障害が出ることはありません。広い範囲で視床が障害されると、ビリビリとした痛みが残ることがあります(視床痛)。視床痛は日常生活に支障が出るほど強いこともあり、その場合は神経障害による痛みを和らげる薬を使うことで軽減できることがあります。またてんかんの薬が有効なこともあります。

一次感覚野には体の部分部分をそれぞれの脳の部分が司っていて、障害された一次感覚野の部分によってしびれなどの感覚障害が出現する部位が決まります。

脊髄、脊椎の障害

脊髄の障害

稀ですが脊髄の病気でしびれがおきることがあります。脊髄では左右の感覚神経がかなり近い部分を通っていますので、脳の病気と違って、両側の感覚障害が同時に出現することもあります。脊髄の病気が原因でしびれなどの感覚障害が出現した場合は、病気の部分だけではなく、それより先の感覚がすべて障害されます。

また脊髄の病気による感覚障害では、位置覚の障害が起きることもあります。触覚や痛覚などは正常ですが、目をつぶると自分の指や手足の位置がどうなっているのか分からないという特殊な感覚障害で、非常に歩きにくくなります。

腰椎脊柱管狭窄症

背骨の中の脊髄や脊髄から出た神経(馬尾)が通っている部分を脊柱管と言い、靭帯が厚くなるなど様々な原因で脊柱管が細くなると馬尾に悪影響することがあり、これを脊柱管狭窄症と言います。典型的な症状は歩行時の足の痛みです。しばらく歩いていると足が痛くなり、座って休むと改善します。また前にかがむと脊柱管狭窄が改善するため、自転車には長時間乗ることが出来ます。休めば治る程度痛みであれば、痺れを軽減する薬で様子を見ますが、力が入りづらくなったり、排尿排便に障害が出た場合は脊柱管を広げる手術を検討します。

椎間板ヘルニア

背骨と背骨の間にクッションとして存在している椎間板が後ろに突出すると、脊髄や脊髄から手足に伸びる神経を圧排し、神経を障害することがあります。椎間板ヘルニアによる脊髄や神経の障害では運動麻痺と感覚障害が両方出現することがあります。障害された脊髄や神経の高さにより、麻痺する筋肉や感覚が障害される皮膚の部分がかなり厳密に決まっています。逆に言うと、症状によりどの高さの神経根の障害なのかが分かります。症状が感覚障害だけであれば基本的には飲み薬等で様子を見ますが、運動麻痺が出現した場合は手術を検討します。

末梢神経の障害

背骨から出た神経は末梢神経と言います。末梢神経が障害されるとその神経が支配している部分の感覚障害が出現します。また末梢神経は感覚だけでなく運動機能も担っているものがあり、病気によっては感覚障害だけではなく運動麻痺も出現することがあります。

糖尿病

手足の指先の感覚神経はとても長い神経なので、何らかの原因で障害されることがあります。糖尿病では小さな血管が影響され、結果として神経障害が起きることがあります(糖尿病の3大合併症は腎症、網膜症、神経症です)。糖尿病性神経症の典型的な症状は手袋靴下型の感覚障害で、手足の先の方のしびれや感覚低下が生じます。糖尿病が見つかった場合、しびれの治療も大事ですが、放っておくと脳卒中心筋梗塞を起こしたり、あるいは失明腎不全を起こす病気なので、きちんと治しましょう。

手根管症候群、肘部管症候群

手の親指から中指当たりの感覚神経(正中神経)が手首を通る部分を手根管と言います。また手の小指や薬指の一部から前腕の小指側の感覚神経(尺骨神経)が肘を通る部分を肘部管と言います。手根管や肘部管は狭く、神経が障害されやすい部分になります。また肘部管のそばでは尺骨神経がかなり皮膚に近いところを通っており、怪我によって神経の障害が出やすい部分になります。これらの神経が障害されると、その神経が支配している部分のしびれや感覚障害が出現します。またひどい場合は指に力が入らなくなります。症状が軽い場合は様子を見ますが、特に運動障害が出るような場合は手術も検討されます。

帯状疱疹

感覚神経がウイルスによって障害され、ピリピリとする痛みを伴う痺れが出現し、その部分にボツボツと皮疹が出現します。基本的には1本の感覚神経が障害されるので、左右両方に出現することはなく、また別の感覚神経の支配領域に症状が進行することもありません。早期に治療を行わないと帯状疱疹後神経痛となり、強い痛みが残存することもありますので、早めに医療機関を受診しましょう。