認知症は基本的には物覚えが悪くなり(記銘力障害)、判断力が落ち、様々な社会生活が困難となる病気の総称です。様々な病気が認知症を起こします。例えばアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症、脳血管障害、脳腫瘍、水頭症、外傷性疾患(脳のけが)、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症などです。また、年を重ねるごとに脳の機能そのものが低下し、認知症と同じような状態になることもあります。
これらの病気のうち治療することで認知症が治る、あるいは改善するものもありますし、一方で進行を遅らせることは出来るが改善することは出来ないものや、改善することすら難しいものもあります。大切なことは治療可能な認知症(treatable dementia)を探して治療することです。認知症が疑われた場合は、簡単な物覚え検査、脳の画像検査、採血検査などを行い、年齢相応の記憶力が否か、認知症の場合に治療可能なものがあるかどうかを調べます。
治療可能な認知症
水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍が原因で認知症となっている場合は、手術で良くなる可能性があります。当院でこれらが発見された場合は手術可能な病院を紹介します。他にも甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症なども治療可能な認知症である可能性があります。認知症の原因となった病気やどれだけ長い期間認知症になったかによりますが、場合によってはほとんど元通りにまで改善することもありますので、認知症がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。
進行を遅らせることが出来る認知症
アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の場合、認知機能を改善することは出来ませんが、薬剤により進行を遅らせることが出来る可能性があります。しかし、たとえ進行を遅らせることが出来たとしても徐々に認知機能障害は進行します。適切な行政のサービスを利用して適切な社会生活を維持することが当面の目標になります。
治療することが困難な認知症
脳梗塞や脳の怪我、脳の感染などが原因ですでに脳の機能が広く障害された場合も認知症、あるいは認知症と同様の状態になることがあります。ある程度改善することもありますが後遺症として認知機能障害が残ることが多く、また多くの場合時間経過とともに徐々に症状が進みます。残念ながら現在の科学、医学の限界で、体調管理や生活環境の整備に主眼を置くことになります。