画像検査は万能ではありません

主に脳の病気や怪我に対して画像検査を行う場合、CTかMRIを行います。どちらも同じような画像が得られますが、検査の特性があり向き不向きがあります。また、画像の解像度には限界があり、精度の非常に高い画像検査で正常だったとしても、病気がないとは言えません。画像検査は万能ではなく、他の検査を併用しながら総合的に判断する必要があり、医師による診察が非常に重要です。

一般的にMRIの方が優れていますが状況によります

CTもMRIも体の断面を画像化して臓器の状態や病気について評価する検査です。CTは放射線を使って、MRIは磁場を使って画像を作ります。一般的にMRIはCTより解像度が高く、細かな異常を発見できる可能性が高くなりますが、必ずしもMRIの方がCTよりも適しているというわけではなく、検査を受ける方の状態や想定される疾患によって最適な画像検査を選択することが重要です。

MRIの利点

MRIの方が解像度が高くまた撮像方法の種類も豊富であることから、一般的にMRIの方がCTより適しています。

MRIの方がCTよりも解像度が高く、細かく脳の状態を評価できます。またMRIは何種類もの撮像の仕方があり、想定される病気に適した画像を撮像することにより、正確に診断を行える可能性が上がります。

脳梗塞、脳腫瘍、血管の病気、妊娠の可能性のある女性はMRIの方が適しています

特に発症早期の比較的小さな脳梗塞はCTでは異常になりませんが、MRIでは非常に小さな脳梗塞もはっきりと描出できるので、発症早期の小さな脳梗塞が想定される患者さんにはCTよりもMRIのほうがより正確に診療できます。

MRIの方が解像度が高いため、小さな脳腫瘍が想定される場合はMRIの方が適しています。

MRIでは造影剤を使うことなく血管を描出できますので、脳動脈瘤や血管が詰まっている、詰まりかかっていないるなど、脳の血管の病気が想定される場合はMRIが適しています。

CTは放射線による被爆がありますので、一般的に妊娠している人はCTを受けられません。MRIは磁場を使いますが、胎児に対する磁場の安全性は確立していません。妊娠している方はできる限りMRIも避けたほうが無難ですが、もし頭の画像検査が必要になった場合は、MRIが適しています。

CTの利点

MRIが撮像できない患者さんや、CTの方が適している患者さんもいます。

ペースメーカーや人工内耳のある患者さんの多くはMRIを受けられません

MRIは検査室全体を強力な磁場が覆っているため、金属を検査室に持ち込むことは出来ません。ペースメーカーや人工内耳などがある患者さんは磁場により故障する可能性があるため検査室に入ることができません。最近はMRI対応のペースメーカーもありますが、入念な準備の上循環器内科医立会いのもと行う必要があり、万が一ペースメーカーが止まってしまった時のため、基本的には大きな病院でしか行えません。

CTは準備が簡便です

MRIは体につけているすべての金属を外す必要があり、病院によりますが一般的には検査着に着替えることが多いです。腕時計やクレジットカードを誤って検査室に持ち込んでしまうと壊れてしまいます。検査を受ける方の準備が必要で煩雑な手続きが必要になり、人によっては面倒と感じる方もいます。一方でCTは撮像する部位に金属がなければ問題ありません。頭部CTではヘアピンやピアスなどの金属が頭に着いてなければ、そのまま検査室に入りそのまま撮影ができます。MRIは準備が大変ですが、CTは着替える必要もないので、準備が非常に簡便です。

MRIは狭い空間の中で、大きな音が出て、撮像の時間が長いです

MRIは非常に狭い空間の中で非常に大きな音が出ますので、閉所恐怖症のある方には難しい検査です。

頭部MRIの撮像時間は10分から30分程度かかることが多くその間はちょっとでも動いてはいけません。そのためじっとしていられない小さな子供や精神発達遅滞、知能障害、意識障害、高度の認知症の方はMRIを行うことが難しくなります。一方でCTは位置を決めるのに数分かかりますが、撮像時間は15秒から30秒程度なので、じっとしていられない患者さんでも工夫して撮像できることがあります。

MRIは骨の情報がありません。出血についてはCTでも十分に判断できます

MRIでは骨に関する情報はほとんどありません。骨折や骨の異常が想定される怪我、病気の場合はCTの有用性が高くなります。

くも膜下出血や他の脳出血はCTでも十分に検出することができます。特に頭痛の原因検索を行う場合はMRIでも良いですが、CTは簡便に、また妊婦以外のほぼ全員に検査することができますので、CTで代用することも可能です。大学病院や総合病院などの多くの大病院では、くも膜下出血や脳出血が疑われた場合は、まずCTを行うことが多いです。

非常に稀ですが、MRIでのみ異常を検出できるくらい出血が少ないくも膜下出血の場合がありますので、強い頭痛が続く場合は、CTが正常だったとしても一度はMRIを撮像する方が無難です。

磁場と放射線被爆

MRIは磁場を使って、CTは放射線を使って検査を行います。磁場は必ずしも悪影響がないとは言えませんが、現在のところ磁場による人体への大きな問題は起きていません。一方でCTは放射線を使用するため被爆します。

被爆というと非常に怖い印象がありますが、私たちは常に自然界から放射線を被爆してます。また飛行機に乗るとさらに被爆量が増えます。一般的に頭のCTを行うと、日本に住んで一般的な生活をしている人が約1年から2年の間に自然界から受ける放射線量を被曝しますが、これは人体に悪影響が出る危険な放射線量に比べ非常に少ない被爆量とされています。

CTは妊娠している人以外には制限がなく、簡便に短い時間で検査を行うことができます。患者さんの状態や想定される疾患によって最適な画像検査を選択することが重要です。