しびれ・感覚障害の解説
― ビリビリ、ジンジン…その違和感の正体を知る ―
「触った感覚が鈍い」「温度が分からない」といった感覚の低下から、「針で刺されたような痛み」「常にビリビリする」といった異常な感覚まで、しびれの現れ方は多種多様です。 感覚神経は全身に張り巡らされた非常に精密なネットワークであり、その経路のどこかにトラブルが起きることでしびれが生じます。
感覚を感じるメカニズム
感覚を感じるメカニズム
私たちの体は、皮膚や筋肉で受け取った刺激を電気信号に変え、以下の経路で脳に届けています。
- 受容器: 手、足、顔などの末端で刺激をキャッチ
- 末梢神経: 全身から脊髄へ信号を運ぶ
- 脊髄: 体幹を通るメインストリート(顔の感覚は直接脳へ)
- 視床: 脳の中継基地。ここで信号を整理し、大脳へ送る
- 一次感覚野(頭頂葉): ここで初めて「触られた」「痛い」と認識する
※この途中のどこかが障害されると、しびれや感覚障害が出現します。
注意が必要なしびれ
以下の症状を伴う場合は、脳梗塞や脳出血の初期症状の可能性があるため、至急受診してください。。
- 突然の片側のしびれ:急に片側の手足だけがしびれ出した。
- 脱力を伴う:手足に力が入らない。
- 言語障害を伴う:言葉が出にくい、ろれつが回らない。
- 視機能異常やめまいを伴う:視界が二重に見える、めまいがする。
原因(1)脳の障害によるしびれ
脳の中継所や認識部でのトラブル
脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などによって感覚神経の通り道が破壊されると、その神経が担当している部位に感覚障害が起こります。
1. 視床(ししょう)の障害と「視床痛」
脳の中枢にある「視床」は、全身からの感覚が集まる中継基地です。ここが障害されると、体の広範囲に強いしびれが出現します。 視床痛と呼ばれる後遺症では、服が触れるだけで激痛が走るなど、非常に強いしびれや痛みが続くことがあります。これは通常の鎮痛剤が効きにくいため、神経障害性疼痛専用の薬やてんかんの薬を用いて症状を和らげる専門的な治療が必要です。
2. 脳幹と一次感覚野
脳幹には多くの神経が密集しているため、しびれ以外に「ろれつが回らない」「顔の麻痺」「バランス障害」などが合併しやすいのが特徴です。 一方、大脳の表面にある「一次感覚野」は、場所ごとに担当する体の部位が決まっています。障害されたピンポイントな場所によって、「親指だけがしびれる」「口元だけがしびれる」といった局所的な症状が出ることがあります。
原因(2)脊髄・脊椎の障害によるしびれ
背骨の中を通る「メインケーブル」の圧迫
【皮膚の支配神経領域図(デルマトーム)】

※しびれている部位を確認することで、どの高さの神経が障害されているかを推測できます。
1. 脊髄(せきずい)自体の病気
脊髄内では左右の神経が密接しているため、脳の病気と異なり「両側」に症状が出ることが多いのが特徴です。また、位置覚(いちかく)の障害という特殊な症状が起きることもあります。「触られた感覚はあるのに、目をつぶると自分の足がどの位置にあるか分からず歩きにくい」といった不思議な感覚変化が生じます。
2. 腰椎脊柱管狭窄症(ようついせきちゅうかんきょうさくしょう)
加齢などで神経の通り道(脊柱管)が狭くなり、中の神経(馬尾)を圧迫します。特徴的なのは間欠性跛行(かんけつせいはこう)です。 「少し歩くと足が痛くてしびれるが、前かがみで休むと楽になる」という症状です。自転車は前かがみ姿勢になるため長時間乗れるのが特徴的です。排尿・排便に影響が出た場合は早急な手術の検討が必要です。
3. 椎間板ヘルニア
クッションである椎間板が飛び出し、特定の神経根を強く圧迫します。上の図(デルマトーム)のように、圧迫された高さによってしびれる場所が厳密に決まっているため、診察である程度の診断が可能です。感覚障害だけでなく「足に力が入らない」といった運動麻痺が出てきた場合は、手術を視野に入れた治療が必要となります。
原因(3)末梢神経の障害によるしびれ
全身に広がる「枝分かれした配線」のトラブル
糖尿病性神経症
糖尿病の三大合併症の一つです。高血糖により細い血管が傷つき、末端の神経に栄養が届かなくなります。手袋靴下型と呼ばれる症状が特徴で、両方の手足の先からジンジンとしたしびれが始まります。放置すると脳卒中や腎不全のリスクも高まるため、根本的な血糖コントロールが不可欠です。
手根管・肘部管症候群
手首や肘の「神経が通り抜ける狭いトンネル」で神経が圧迫されます。手根管(手首)なら親指〜中指が、肘部管(肘)なら小指側がしびれます。使いすぎや怪我が原因となることが多く、ひどくなると親指の付け根の筋肉が痩せたり、指の力が弱くなったりします。
帯状疱疹(たいじょうほうしん)
ウイルスが感覚神経を攻撃し、ピリピリ・チクチクした強い痛みとしびれが現れた後、赤いボツボツ(皮疹)が出てきます。 「左右のどちらか片側だけ」に出るのが大きな特徴です。治療が遅れると、皮疹が治った後も「帯状疱疹後神経痛」として耐えがたい痛みが残ることがあるため、早期の抗ウイルス薬投与が極めて重要です。
当院での検査と治療
神経学的診察
経過を詳しく問診し、筋力、反射、感覚などを確認し、脳、脊髄、末梢神経のどこに原因があるかを推定します。
精密MRI検査
高性能(1.5T)のMRIを用いて、脳梗塞や脳腫瘍、その他の脳の圧迫状態を画像で鮮明に可視化します。
最適な治療提案
内科的治療から、緊急手術が必要な場合の連携病院への迅速な紹介まで、一貫してサポートします。
受診をご検討の方への大切なご案内
- しびれや感覚障害の原因は非常に多岐にわたり、検査を行っても原因を100%特定できないことも少なくありません。
- 当院では原因解明の手がかりとして、必要に応じて積極的に頭部MRI検査を施行しております。
- MRIを用いることで、脳梗塞や脳出血、脳腫瘍など、早急な治療介入が必要な重大疾患の有無を詳細に検討し、見逃しを防ぐ体制を整えています。
工藤脳神経外科クリニック
院長 工藤琢巳
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医
日本頭痛学会専門医
