脳を障害する多くの病気で中枢性めまいを来します。急速に進行する病気や、拡大、再発を繰り返す病気、生命にかかわる病気など、中枢性めまいの場合は特に注意が必要です。

脳梗塞脳出血脳腫瘍などにより平衡感覚をつかさどる脳の部分が障害されるとめまいふらつきが出現します。特に脳幹や小脳が障害されることによりめまい、ふらつきが出現する場合があります。通常これらの病気によってめまいやふらつきが出現した場合は、めまい以外にも、バランスが取れない、ろれつが回らない、顔が半分動かない、物が二重に見える、耳が聞こえない、手足が動かない、手足の運動が粗雑になる、意識が悪い等、他の症状が同時に出現することが多いです。

めまいと共にこういった症状が出現した場合は脳の病気を発症している可能性が高く、なるべく早く脳の病院を受診し、早急に検査を行う必要があります。脳幹や小脳はCTではあまり良く描出できないため、めまいの画像検査の場合は極力MRIを行う方が良いです。

特に急速に症状が出現、悪化する場合は、脳梗塞、脳出血、悪性脳腫瘍、脱髄疾患など、早期に治療が必要で、場合により命に関わるものや難病の可能性もあり、早急に病気を確定して治療を開始する必要があります。

障害部位による特徴

障害される部位により、めまいやそれに随伴する症状に特徴があり、神経診察により障害部位を推定することが可能です。

1.中脳障害によるめまい

中脳病変によるめまいでは、眼球運動障害、特に上下方向の眼球運動障害(目を上下に動かすことが出来ない)や眼瞼下垂(瞼が下がる)を認めることがあります。

2.橋障害によるめまい

橋の病変によるめまいでは、水平方向の眼振、片眼の内転障害(内側へ目を動かすことが出来ない)、水平方向の眼球運動障害(左右に目を動かせない)、半身の運動障害や感覚障害、協調運動障害(バランスよく動かせない)、顔面麻痺などを伴うことがあります。

3.延髄障害によるめまい

延髄には前庭神経の核になる部分があるため、延髄障害では高率にめまいを起こします。また、構音障害(ろれつが回らない)、嚥下障害(うまく飲み込めない)、顔面の温痛覚障害(温度や痛みが分からない)、四肢の協調運動障害、Horner症候群(縮瞳、眼裂狭小化、発汗障害)、舌の運動障害などを伴うことがあります。

4.小脳障害によるめまい

小脳の病変によるめまいでは、構音障害(ろれつがまわらない)、上下肢の協調運動障害、体幹失調(起立・歩行時のふらつき)などを伴うことがあります。

めまいに伴う神経症候により想定される中枢性めまいの責任病巣

神経症候主な責任病巣
眼症状運動障害
Skew deviation
眼振(注視誘発眼振)
Horner症候群
中脳、橋
延髄
小脳
延髄
構音障害球麻痺、仮性球麻痺延髄
麻痺顔面
上下肢

中脳、橋、延髄
感覚障害視床、橋、延髄
小脳性協調運動障害肢節運動失調/構音障害小脳(SCA、AICA領域)
小脳性平衡障害体幹失調小脳(PICA領域)

眼振(末梢性)自発、頭位、頭位変換内耳、PICA領域(稀)
半規管麻痺Caloric/HIT異常内耳、AICA領域(稀)