概要

慢性頭痛とは、頭痛が月に15日以上・3カ月を超えて続く状態の総称です。一つの独立した疾患名ではなく、片頭痛・緊張型頭痛などが慢性化した状態を指します。日本における慢性頭痛の有病率は成人の約3%と推定されており、決して珍しい状態ではありません。

慢性頭痛の中で最も頻度が高いのは慢性緊張型頭痛と慢性片頭痛です。慢性片頭痛は月に15日以上の頭痛があり、そのうち8日以上が片頭痛の特徴を満たす状態と定義されています。慢性緊張型頭痛は月に15日以上・年間180日以上の頭痛が3カ月を超えて続く状態です。

慢性頭痛になる背景には、頭痛発作の頻度増加・鎮痛薬の使用過多・睡眠障害・ストレス・うつ・不安障害など複数の要因が関与していることが多いとされています。特に注意が必要なのは、市販の鎮痛薬を使いすぎることで頭痛がさらに慢性化する「薬物乱用性頭痛(MOH)」への移行です。慢性頭痛の患者さんの約半数に薬物乱用性頭痛が合併しているという報告もあります。

「頭痛があるのが当たり前になってしまった」「頭痛のない日がほとんどない」という方も、適切な診断と治療により頭痛の頻度・強さを改善できることが少なくありません。頭痛診療ガイドライン(日本頭痛学会)でも、慢性頭痛に対する予防療法の重要性が強調されています。

当院での取り組み

当院では頭痛に対しては積極的に画像検査を行っています。CT、MRIを完備しており基本的に即日検査、即日説明をしています(受診された時間やその日の混み具合によっては、翌日以降に検査を予定することもあります)。

慢性頭痛が疑われる場合は、現在の頭痛のパターン・薬の使用状況・生活習慣・睡眠・ストレスなどを丁寧にお伺いします。頭痛ダイアリーをつけていただくことで、頭痛の頻度・強さ・薬の使用状況が可視化され、診断と治療方針の決定に大変役立ちます。初診時に持参いただけると診察がよりスムーズになります。


慢性頭痛の分類

慢性頭痛は国際頭痛分類第3版(ICHD-3)において以下のように分類されています。

慢性片頭痛(1.3) 月に15日以上の頭痛が3カ月を超えて続き、そのうち8日以上が片頭痛の特徴を満たすもの。もともと片頭痛があった方が慢性化した状態です。

慢性緊張型頭痛(2.3) 月に15日以上(年間180日以上)の頭痛が3カ月を超えて続くもの。もともと反復性緊張型頭痛があった方が慢性化した状態です。

薬剤の使用過多による頭痛(8.2) 鎮痛薬やトリプタン製剤の使いすぎによって慢性化した頭痛。慢性頭痛の重要な原因の一つです。

新規発症持続性連日性頭痛(4.10) 明確な始まりがあり、発症から24時間以内に途切れることなく持続する頭痛が3カ月を超えて続くもの。比較的まれですが、二次性頭痛との鑑別が重要です。


診断基準

慢性片頭痛(ICHD-3:1.3)

A.月に15日以上の頭痛が3カ月を超えて続く
B.前兆のない片頭痛または前兆のある片頭痛の診断基準を満たす発作が5回以上ある
C.月に8日以上が以下のいずれかを満たす
 ①前兆のない片頭痛の診断基準C・Dを満たす
 ②前兆のある片頭痛の診断基準B・Cを満たす
 ③発症時には片頭痛と考えられ、トリプタン製剤またはエルゴタミンが有効であった
D.薬剤の使用過多による頭痛(8.2)の診断基準Bを満たさない

慢性緊張型頭痛(ICHD-3:2.3)

A.平均して月に15日以上(年間180日以上)の頭痛が3カ月を超えて続く
B.頭痛の持続時間は数時間から数日、または絶え間なく続く
C.頭痛は以下の4つの特徴の少なくとも2項目を満たす
 ①両側性
 ②性状は圧迫感または締め付け感(非拍動性)
 ③強さは軽度〜中等度
 ④歩行や階段昇降などの日常的な動作によって増悪しない
D.以下の両方を満たす
 ①悪心も嘔吐もない
 ②光過敏または音過敏のどちらかはあってもよいが、両方はない
E.薬剤の使用過多による頭痛(8.2)の診断基準Bを満たさない


慢性化する原因・リスク因子

もともとあった頭痛が慢性化する原因・リスク因子として、以下のものが挙げられます。

薬物乱用性頭痛への移行

鎮痛薬やトリプタン製剤を頻繁に使用することで、頭痛がかえって慢性化するリスクがあります。慢性頭痛の最も重要な原因の一つであり、頭痛診療ガイドラインでも特に注意が促されています。

睡眠障害

不眠・睡眠の質の低下は頭痛の慢性化と強く関連しているとされています。片頭痛と睡眠障害は相互に影響し合うことが多く、睡眠の改善が頭痛の改善につながることがあります。

うつ・不安障害

うつ病・不安障害と慢性頭痛は合併しやすく、相互に悪化させ合う関係にあるといわれています。慢性頭痛の治療においては、精神的な背景にも目を向けることが重要です。

肥満

肥満は慢性片頭痛のリスク因子の一つとされています。

頭痛発作の高頻度化

月に4回以上の片頭痛発作がある場合、慢性化のリスクが高いとされています。発作が多い段階で予防療法を導入することが、慢性化の予防につながります。

カフェインの過剰摂取

カフェインを大量に摂取している場合、頭痛の慢性化リスクが高くなるとされています。


症状の特徴

慢性頭痛の症状はもともとの頭痛疾患の種類や薬物乱用の有無によって異なりますが、共通する特徴として以下が見られます。

  • 頭痛のない日が月の半分以下になっている
  • 以前は週1〜2回程度だった頭痛が、毎日のように続くようになった
  • 頭痛の性質が変化してきた(以前は拍動性の激しい頭痛だったが、毎日だらっと続く重い頭痛になった)
  • 鎮痛薬の効果が以前より弱くなってきた、または効果の持続時間が短くなった
  • 頭痛とともに集中力の低下・倦怠感・気分の落ち込みを感じる
  • 仕事・家事・学業などへの支障が大きくなってきた

治療

原因の特定と薬物乱用の評価

慢性頭痛の治療を始める前に、まず薬物乱用性頭痛(MOH)が合併していないかを評価することが重要です。MOHが合併している場合は、まず薬剤離脱を行うことが先決となります。薬剤離脱により頭痛が改善するケースも多く、その後で改めて予防療法を評価します。

予防療法

慢性頭痛、特に慢性片頭痛に対しては予防療法が重要です。頭痛診療ガイドラインでは、月に一定回数以上の頭痛がある場合に予防療法の導入が推奨されています。使用される主な予防薬として以下のものがあります。

β遮断薬(プロプラノロールなど) カルシウム拮抗薬(ロメリジンなど) 抗てんかん薬(バルプロ酸・トピラマートなど) 三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)

これらの薬剤で効果が不十分な場合には、CGRP関連製剤(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ・ナルティーク・アクイプタ)が有効な選択肢となります。CGRP関連製剤は慢性片頭痛に対して保険適用があります。

生活習慣の改善

規則正しい睡眠・食事・水分補給・適度な運動は頭痛の慢性化予防に有効とされています。特に睡眠の質の改善は頭痛の頻度低下に直結することが多く、重要な非薬物療法の一つです。また過度なカフェイン摂取を避けることも重要です。

頭痛ダイアリーの活用

頭痛の頻度・強さ・薬の使用状況・生活習慣などを記録する頭痛ダイアリーは、慢性頭痛の治療において非常に有用なツールです。治療の効果を客観的に評価できるだけでなく、誘発因子の把握にも役立ちます。


薬物乱用性頭痛(MOH)との関係

慢性頭痛と薬物乱用性頭痛は密接に関連しています。慢性頭痛の患者さんの約半数にMOHが合併しているという報告があります。もともと片頭痛や緊張型頭痛があった方が、頭痛発作のたびに鎮痛薬を使用するうちに使用頻度が増加し、気づかないうちにMOHに移行しているケースは少なくありません。

慢性頭痛の治療を進める上で、MOHの合併を見逃さないことが重要です。「以前より薬が効かなくなってきた」「薬を飲まないと頭痛が出る」という方は、MOHへの移行を疑う必要があります。


当院へのご案内

当院では脳神経外科専門医・頭痛専門医が診察を行っており、CT・MRIによる画像検査を院内で施行できる体制を整えています。「頭痛のない日がほとんどない」「毎日頭が痛い」「以前より頭痛の頻度が増えてきた」という方はお気軽にご相談ください。慢性頭痛の原因を正確に診断した上で、予防療法を含めた適切な治療をご提案します。

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頭痛専門外来
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工藤 琢巳

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