概要

「脳梗塞は一度起こると、再び起こりやすい」ということをご存知でしょうか。脳梗塞を経験された方の一部は、適切な管理を行わない場合に再発のリスクが高まると言われています。しかし、日々の生活習慣を丁寧に整えることで、そのリスクを下げることができると考えられています。血圧のコントロール、食事の見直し、無理のない運動—どれも特別な設備や大きな費用を必要とせず、今日から取り組めるものばかりです。この記事では、脳梗塞の慢性期(回復後の安定した状態が続く時期)を過ごされている方やそのご家族に向けて、再発予防のために日常生活でできることをわかりやすくご紹介します。

目次

なぜ脳梗塞は再発しやすいのか

脳梗塞とは、脳の血管が詰まることで脳の細胞に酸素や栄養が届かなくなる病気です。一度発症した方は、血管そのものが傷つきやすい状態になっていたり、動脈硬化(どうみゃくこうか:血管の壁が厚く硬くなる変化)が進んでいたりすることが多いと言われています。そのため、再び同じような血管トラブルが起きやすいと考えられています。

再発のリスクを高める主な要因としては、以下のものが挙げられます。

・高血圧
・糖尿病や脂質異常症:血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが崩れた状態)
・喫煙や過度の飲酒
・肥満や運動不足
・不規則な食生活

これらはいずれも、生活習慣の改善によってコントロールできる可能性があると言われています。主治医の指導のもとで、一つひとつ丁寧に取り組むことが大切です。

血圧管理—再発予防のいちばんの基本

血圧が高いと何が問題なの?

高血圧は、脳梗塞の再発に深く関わる最も重要な危険因子のひとつと考えられています。血圧が高い状態が続くと、血管の壁に慢性的なダメージが加わり、動脈硬化が進みやすくなると言われています。その結果、血管が詰まりやすくなり、再発のリスクが上がると考えられています。

毎日の血圧管理で意識したいこと

血圧を適切に保つために、日常生活で取り組めることを以下にまとめました。

① 毎朝・毎晩、決まった時間に血圧を測り、記録する習慣をつける
② 塩分(食塩)の摂取量を1日6g未満を目安に控える(日本高血圧学会の目安より)
③ 寒暖差に注意する(特に冬の朝や入浴時は血圧が変動しやすいと言われています)
④ 処方された降圧薬(血圧を下げるお薬)は自己判断で中断しない

血圧の目標値は個人の状態によって異なるため、必ず主治医にご確認ください。

食事の見直し—血管を守る食べ方のポイント

塩分を減らす工夫

日本人の食事は塩分が多くなりがちと言われています。醤油やみそ、漬物、加工食品などには多くの塩分が含まれています。以下のような工夫で、無理なく減塩に取り組むことができると考えられています。

・だしの旨味(うまみ)を活かしてしっかり風味をつける
・醤油やソースは「かける」のではなく「少量つける」
・加工食品や外食の際は栄養成分表示を確認する習慣をつける
・香辛料やレモン・酢などの酸味を上手に活用する

血管に良いとされる食品を積極的に摂る

特定の食品だけを食べれば再発が防げるというわけではありませんが、バランスのよい食事を続けることが大切だと考えられています。以下の食品は血管の健康維持に役立つ可能性があると言われています。

・青魚(さば・いわし・さんまなど):DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を含む
・野菜・果物:食物繊維やカリウムが豊富で、血圧の調整に関わると言われている
・大豆製品(豆腐・納豆など):良質な植物性タンパク質を含む
・海藻類:食物繊維が多く、コレステロールの吸収を抑える働きがあると言われている

一方、動物性の脂肪(バターや脂身の多い肉など)や糖分の過剰摂取は控えることが望ましいとされています。食事内容については、担当の管理栄養士や主治医にもご相談ください。

運動習慣—無理なく続けることが大切

運動が再発予防に役立つ理由

適度な運動は、血圧や血糖値・コレステロール値を改善する効果が期待できると言われています。また、肥満の解消や血流の改善にもつながると考えられており、脳梗塞の再発予防においても重要な柱のひとつとされています。ただし、脳梗塞後の慢性期は後遺症の程度に個人差があるため、運動の内容や強度は必ず主治医やリハビリ担当のスタッフと相談しながら決めることが重要です。

日常に取り入れやすい運動の例

以下のような運動が、脳梗塞後の方に取り入れやすいと言われています。

・ウォーキング:1日20〜30分程度を目安に、無理のないペースで歩く
・ストレッチ:関節の柔軟性を保ち、転倒予防にもなる
・水中歩行:関節への負担が少なく、体力に不安がある方にも取り組みやすいとされている

運動中に以下のような症状が出た場合は、すぐに中止して医療機関を受診してください。

・強い胸の痛みや息切れ
・急な頭痛やめまい
・手足のしびれや脱力感
・言葉が出にくくなる、呂律(ろれつ)が回りにくくなる

薬の服用と定期受診—自己判断は禁物

脳梗塞後の慢性期には、抗血栓薬(血液が固まりにくくなるようにするお薬)や降圧薬などが処方されることが一般的と言われています。これらのお薬は、症状が安定していても自己判断で服用を止めることは大変危険です。「調子がいいから飲まなくていいだろう」と思われることもあるかもしれませんが、お薬を継続することが再発防止に直結します。

また、定期的な通院を欠かさないことも非常に重要です。受診時には以下の点を主治医に伝えると、より適切なケアにつながります。

・毎日記録した血圧の数値
・気になる症状の変化(手足のしびれ、ふらつき、言葉の出にくさなど)
・服薬状況(飲み忘れがないかどうか)
・食事や運動の状況

ストレスと睡眠—見落とされがちな再発リスク

血圧・食事・運動と並んで、精神的なストレスや睡眠の質も脳梗塞の再発リスクに関わると言われています。慢性的なストレスは血圧を上昇させ、自律神経のバランスを乱すとされています。また、睡眠不足や睡眠時無呼吸症候群も、心血管系への負担を高めると考えられています。

以下のような点を意識してみましょう。

・毎日同じ時間に就寝・起床するリズムをつくる
・入浴はぬるめ(38〜40℃程度)のお湯でゆっくりと行う
・趣味や散歩など、気分転換になる時間を意識的に設ける
・不眠やストレスが続く場合は、主治医や専門のカウンセラーに相談する

ご家族やまわりの方のサポートも、患者さんの心の安定に大きく役立つと言われています。

まとめ

脳梗塞の再発を防ぐためには、血圧の管理・バランスのよい食事・無理のない運動という3つの柱を中心に、日々の生活習慣を整えることが大切だと考えられています。また、処方薬の継続服用と定期的な通院、十分な睡眠やストレスへの対処も、再発予防に欠かせない要素です。「特別なことをしなければ」と身構える必要はありません。今日の血圧測定、今夜の食事の塩分を少し減らすこと、明日の短い散歩、そういった小さな一歩の積み重ねが、血管と脳を守ることにつながっていきます。

気になる症状がある場合や、生活習慣の改善に不安を感じる場合は、ぜひお気軽に担当医や当院スタッフにご相談ください。皆さまの毎日が、安心して過ごせるものであるよう、私たちも全力でサポートいたします。